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コラムを読む商業施設が立ち並ぶ駅周辺から少し外れると、都内とは思えないような鬱蒼とした緑地が広がる住宅地が広がります。
そんな景観に馴染むような低層マンションを購入したKさんご夫妻。大きな窓から森のような緑と自然光が入ってくる1階のお部屋に、陶芸家の絵里加さんとデザイナーの旦那さんのセンス溢れるインテリアが調和しています。
そんなK邸ですが、この住まいが出来上がるまでの道のりは簡単ではなく、スマサガにとってもチャレンジングな経験でした。今回は、限られた予算と時間の中で、自分たちの職住空間を実現したKさんご夫妻のストーリーをご紹介します。
住居と陶芸のアトリエスペースを兼ねて、リノベーションができる広めの物件を探していたKさんご夫婦。当初はピンとくる物件が見つからなかったものの、駅から離れれば見つかるかもしれないと条件を広げて出会ったのが、緑の中に佇むマンションでした。内見時は売主さんがまだ居住中で、部屋の広さや外観、庭の様子くらいしかわからなかったのですが、その日に購入を即決しました。
物件はすぐに購入できたものの、そこから設計プランに入り、竣工まで約4ヶ月ほど。さらに90平米を超えるお部屋のリノベーションに捻出できた予算は約800万円。広さのあるお部屋を整え、Kさんご夫婦の要望を叶えると、見積もりは倍くらいになってしまう・・・。フルスケルトンからフルリノベーションするにはスケジュールも予算的にもタイトという難題を抱えた状態で、K邸のリノベーションプロジェクトがスタートしました。
「年末に設計プランを一気に詰めていった後、3月末まで走りまくった記憶しかありません。時間がなかったけど、こだわりたい部分もあって、そのせめぎ合いでした。解体作業もできる範囲は自分たちでもやって。大変でしたが、ストイックにやることで後で自分たちで納得できたんだと思いました」(絵里加さん)
「一緒に内見してすぐに庭との関係性など、絶対に良くなると感じました。壁式構造だったので間取りの大きな変更は難しく、大まかなプランはすぐに決まり、あとはとにかくKさんたちが何をしたいのか、何を求めているのかを理解する必要がありました。それがわからないとコスト調整の提案ができないので。最初の要望とは変わる部分もあるかもしれないけど、Kさんたちならきっといい結果になると信じていたので、対話を重ねながら大胆な提案もしていきました」(スマサガ設計デザイナー)
「古くなっていた建具やドアはどうしても変えたくて。特に水回りの建具は汚れていたので衛生的にも意匠的にも譲れませんでした。その他にも使い勝手やディテールにも気になるところがありました」(絵里加さん)
細かな部分にもこだわりたい絵里加さんとは対照的に、旦那さんは現実的なタイプ。リノベ進行の作業効率を重視しつつ、全体を考えて相談してくれました。ただ予算的にオーバーしてしまう部分もまだあり、現場との調整をしながらコストのバランスをひとつひとつ明確にし、小さなことでも今やるべきことかどうか検討を重ね、当初は欲しかった収納もひとまず見送ることに。この決断は、後に良い結果につながりました。
家の大きな部分の調整が落ち着き、インテリアや小物などを決めていく段階に。クローゼットの使い勝手を考えたり、予算内で活かせると思えるデザインのシンクやペーパーホルダーを探す為の情報収集やショールーム巡りにはできる限りの時間を捻出しました。そんな経験を重ねて「納得いくように諦める耐性」がついたそうです。
「お金はどうしたって湧いてこないから、とにかく考え続けました。もっとローンを組むこともできたけど、それはせずに。ショールームも何軒か見に行くうちに、カタログと実際に見た印象の違いがわかったり、自分にフィットしそうなものを見つける能力が磨かれました」(絵里加さん)
工事が始まってからも様々なアイデアが生まれたというお二人。実際に現場を見ながら「どこまで残すか?どこに手を加えたいか?」と考えて、その都度、設計デザイナーと相談していました。
「家自体の活かし方や、そこから生まれる空気感をとても大切にするお二人だと感じていたので、工事が始まってからも慎重に考えながら、家のどこを壊すか、どう活かしていくかを相談して進めました」(スマサガ設計デザイナー)
限られた条件のなかで、選び抜いたモルタル仕上げや駆体表しの内装は、K邸を象徴する空間の表情となりました。
「時間と予算が限られていたし、当初やりたいと思っていたことは全部はできなかったけど、制約の中で考え抜いたのが良かったかなと。実際にやってみないとわからなかったことが沢山あったので、大変だったけど本当にやってよかったと思います。住み始めて5年経って、やっと理想に近づいていきたなって。必要だったこと、必要なかったことは、あとで気づくものだなと思いました」(絵里加さん)
「Kさんご夫婦が凄いなと思うのは、いつでも自分たちで価値を見つけて行動できるところ。だから物件を見つけてすぐに購入を決断できたり、予算という枠の中で自分たちに本当に必要なリノベーションが実現できたのだと思います」(スマサガ設計デザイナー)
その後、お子さんが誕生して3人家族になったKさんご一家。生活に必要なものが増えてきたタイミングで、収納家具を作りたいと再びスマサガ不動産にご依頼をいただきました。
「この家に住み始めてから、季節によって変わる光の加減や気分に合わせて模様変えをしたり。空間との付き合い方がわかっていく中で、どこに何を置きたいのか、どんな機能をもつ家具が欲しいのかがわかってきました。空間に馴染むように、リノベーションをお願いした時と同じ人たちに作ってもらいたいなと思ってお願いしました」(絵里加さん)
キッチンには、収納するもののサイズを細かく計算した棚。リビングには子供が自分で片付けられるような収納家具。玄関には外出時に必要なものや、子供の手が届いて欲しくないものをしまっておく吊り戸棚など。必要なスペックは決まっていたので、空間の中で圧迫感のないサイズやデザインを一緒に考えていきました。
完成した造作家具は、切り出しの取手や素材の美しさが印象的な仕上がりに。空間に合わせた素材やデザイン、置く場所や収納するものに合わせて計算し尽くされた機能性、全てが今の時点で完璧だったといいます。
「こちらはイメージを伝えただけですが、その通りに美しく納まっていて。私も細かいことはあまり言わずに信頼してお願いして、イメージ通りにフィットするものを作ってくださって有り難かったです」(絵里加さん)
「家を一緒に作ったことで信頼関係ができていたので、今回の造作家具のオーダーは、私たちの得意な部分を活かせてもらえたのではないかと感じています。感覚的な部分や細かいところを一緒に確認しながら進めたので、Kさんと作り手、みんなで今のK邸にとって最適なものを製作していけたのだと思います」(スマサガ設計デザイナー)
リビングのモルタル床に重ねて敷いていた琉球畳は、実は親戚からのもらいもの。置いて見たら意外といい感じだったから、と話すお二人は、その時々に合わせて柔軟に空間を作っていきます。自分たちの好みやこだわりが明確で、お互いに共有できているからこそでしょうか。
予算や時間にも想像以上の制約がある状況下で住まいを実現できたのは、小さなチャンスも諦めず、細かい対話や提案を重ねながら一緒に挑戦できた背景がありました。
当初は諦めた収納がたくさんあったけど、数年後に持ち越したことで本当に欲しい収納が分かってきたし、予算的にも時間的にも余裕が出来て結果的にとても良い選択だったと話してくれたKさんご夫妻。
「これからも空間や家具の使い方が変わったりするかもしれないけど、その都度、その時にあわせて、いい塩梅を見つけていければいいかなと思っています」(絵里加さん)
▼Kさんと一緒に行ったインスタライブはこちら
【前編】
https://www.instagram.com/reel/Ct3wBc0JjQT/
【後編】