みなさん、不動産会社にだまされちゃだめです!
情報に踊らされる、情報弱者にはならないでくださいね!
コラムを読む住まいをリノベーションするには、住む人たちのテーマが必要です。そのテーマには、そこに住む人なりの想いや思想がしっかりと反映されることが多いです。今回の住まいも非常にクライアントの想いが反映された住まいでした。家族のコミュニケーションの取りやすさ、そしてお子さんへ伝えたいことが容易に出来る空間は、クライアントの想いが非常に分かりやすく投影されていました。条件と想いが上手く交差すれば、全く土地勘がなくても、そこで素敵な暮らしが出来ることを今回の事例は物語っています。
陽あたり最高の家ではないが、1F特有の情緒ある陽射しを堪能できる。2種類の白で壁を塗り分けたり床に足場板を採用したり、自然光が美しく反射する素材を検討した。
二人は笹塚の「陽あたり最高」の物件に15年住んでいました。住んでいたアパートの大家さんも素敵な方で、家は手狭ながらお互いの職場の中間点に住まいがあるなど交通の便もよく、二人で住むにはそれほど不自由なく暮らせる部屋だったそうです。7年前お子さんが生まれたことが転機となり、住まい探しが始まりました。さすがに34㎡に3人が住むことは難しく。。
実は二人ともそれぞれアクセサリー作りや、布作家として洋服を製作したりなど、主に手仕事を生業にして活躍されています。そんな二人は自分たちの仕事の作業を、家ですることも多くなってきており、作業をするために部屋にあるちゃぶ台も取り合いになっていたそうです。
そんなこともあり、思いつくまま住まい探しを始めた二人。しかし探し始めた当初出会った大手不動産会社の営業マンは、売り込みたい気持ちが先行するありがちな営業一辺倒。紹介物件を回る車中では矢継ぎ早に質問に遭うなど、そのときの不動産会社に対する印象は正直、違和感がありました。
そんななかインターネットで検索を続けていると出会ったのがスマサガ不動産のHPでした。いろんなことが書かれている中で、先に出てきたような営業のやり方などについても、ひとつひとつ思い当たる節があったため、感銘を受けることになり、実際にスマサガ不動産で物件を探すことになりました。
以前、寝室がある北側は暗くて結露が起きがちな環境だった。リノベ後は風と光がよく通る快適な環境にするため、完全に間仕切らず機能的につながった空間を設計。
その後、奥さんの体調が少し優れなくなった関係もあって、いったん住まい探しは止まってしまいます。さらにはその当時家の購入ではなく、賃貸で生活をすることも模索し始めていたそうです。
結果的には、まさに賃貸物件の契約を交わす手前というすごく絶妙なタイミングで、スマサガ不動産からの連絡がありました。これでもう一度部屋探しを再開することになったのでした。
いま板橋に住んでいる二人も、スマサガ不動産で住まい探しをしていた当初は、地縁や友人関係が多い西荻窪で住まい探しをしていました。そんななか最高に最適な希望物件が現れ、内見が終わるとすぐ契約を即決をして申込するなど、全ては順調に進んでいるように見えていました。がしかし、ちょうど同じ時期に現金で決済が出来るクライアントが突如出てきたことで、契約出来ると思っていた物件との契約は流れてしまったのです。
そんな最高で最適な案件が消滅したことで、二人の西荻窪一辺倒だった居住希望地域の幅が拡がることになりました。
そこからの住まい探しで二人が巡り合ったのが、現在居住中の板橋の家でした。
ただ内見にあたり、二人には懸念点もありました。2F以上に住むことを二人は希望していたのですが、実際に今回の住まいは1Fにあります。なぜそうなったのでしょうか。
そこには2つの理由がありました。
ひとつは、ベランダ前の共用の敷地への管理が行き届いていて、防犯面も安全だとわかったこと。
さらに物件が持つ借景の要素が大きく関わっていました。借景とは文字通り景色を借りることですが、その部屋の外には緑が溢れており、その雰囲気を意図的に織り込むことで、部屋自体が映えることを考えたのです。
さらには、二人がかなり京都が好きだということも大きなポイントでした。それこそ借景という概念は京都のお寺によく用いられている様式でもあります。
「アトリエに住む」をコンセプトにした家づくり。冷蔵庫など生活感のある家電製品は、使い勝手を考慮した動線に置きながら存在を感じさせない間取りを検討。
二人は実際に設計するにあたり、様々なものを用いて自分たちの言わんとする雰囲気を伝える努力を怠りませんでした。例えば最初の打ち合わせの前から、二人は自分たちが希望するイメージが共有出来るために、雑誌の切り抜きなどを集めてファイリングしていました。他にも打ち合わせの場所を自分たちが好きな雰囲気のカフェで行うことで、一緒にその空気感を実感してもらうことを意識したりもしました。
それらは実際の空気感やテイストの共通化を、設計スタッフと二人のあいだで行うことを目的にしたものでした。
また二人がプランの参考にするためにスマサガ不動産のオープンハウスに3回程度参加しました。そこでは、実際に住んでいるクライアントの話だったり、自分たちのイメージに近い家具などに触れる機会をもったことも、さらに自分たちのプランを固めていくうえで参考になったようです。
そして二人が住む家でもモノづくりを行うため、家のテーマは「アトリエに住む」というコンセプトで設計と実際のリノベーションは進んでいきました。
家の中心的な場所に存在する大きなダイニングテーブルにはキッチンの機能が組み込んである。これがハブになって家族のコミュニケーションがドライブする。
実際に出来上がった空間で一番目を惹くのは、キッチン機能も備えた大きなダイニングテーブル。このテーブルの大きさとそこにキッチン機能があることは、この部屋最大の発明なんです。なぜかと言えば、料理づくりや水回りの作業時に、日本でよく見られる食卓に背を向けることで起こるコミュニケーションの隔絶が、この部屋では絶対に起きないからです。料理を作っているときでも、後片付けをしているときでも、この部屋では無限にコミュニケーションが取れます。
二人はこう言いました。「家のどこにいても緩やかに気配を感じることが出来るし、つかず離れずの関係で過ごせる空間」と。
リノベした空間に合うようにスマサガが設計した、奥さんの作品作りのためのキャスター付き作業机。「アトリエに住む」のコンセプトを体現した造作家具。
もちろん住んでみて以前と一番変わったことは、お子さんと一緒に住むことだと二人は語ります。
何よりも実際に住んでからの5年間で考えているコトやモノの中心には、お子さんがいることをすごく感じ取ることが出来ました。2人ともモノづくりをしていることもあり、自然とお子さんもその環境で育つし、実際に家でその現場を目撃することもたくさんあります。そのなかで糸も針も持ったことのない小学生低学年のお子さんが、夏休みの自由研究でぬいぐるみ作りをしたいと自発的に行動したという話は、二人のものづくりDNAが、この部屋でどんどんと養われていることを意味する興味深いエピソードでした。そこには、この部屋が「子供の感性が育つ空間」として環境を作ってきた想いが、自然な形でお子さんにも受け継がれているのかも知れません。
ただ、この家には完全に区切られた空間が存在しないため、一人の時間が欲しいときはカフェに行って時間を作ることもあるようです。
寝室ではこもり感と開放感の両方を感じていたいから、パーゴラのような間仕切りをつくり、ファブリックでやわらかい光を取り込む”天蓋”を思わせるスタイルに。
中古住宅をリノベーションして一生懸命に自分たちで考えて設計した家は、新築のように出来上がった瞬間に完成するものではありません。もちろん今回の住まいも例外ではありません。お子さんの成長に合わせて、「あ、本棚ってないから作ろう」みたいなノリで、そのときの環境に合わせて家をカスタマイズしていく感覚。住んでから5年のあいだに新たに購入した家具は存在しないそうです。もちろん出来の良し悪しはあるそうですが、自分たちでDIYをして必要なものを作っていくそうです。そしてまたそれをお子さんが見て学んでいくような良きスパイラルがこの家では生まれていきます。
お子さんには買うよりも先に、どうやったら作れるかと、「作る」ことに抵抗感がなく、感性が上がっていくような環境にあってほしいという言葉が本当に作家性を感じる話でした。
ここに住み始めて5年。お子さんの環境を考えて、全く土地勘のない板橋で生活をはじめ、お子さんの幼稚園生活をきっかけに板橋の地にも地縁が拡がり、今では商店街に行けば誰かに出会うまでになったそうです。
でも、お子さんが大きくなり、今よりも自由になったときは、まだ西荻窪で暮らす生活は夢として持ち続けているということでした。
「家事仕事をしながらでも、無限にコミュニケーションが取れる家」板橋Iリノベーション(取材 2019/9/21)