みなさん、不動産会社にだまされちゃだめです!
情報に踊らされる、情報弱者にはならないでくださいね!
コラムを読む世田谷区を中心に中古マンションを探してリノベーションを考えていたご夫婦が、最終的に、渋谷区の高級住宅地に築40年のレトロでコンパクトなマンションを探し当てリノベーションして住むまでのストーリー。
彼らのストーリーは山あり谷あり紆余曲折を経ていますが、住まい探しの経験が、自分たちの生き方を探す経験でもあったということで、非常に示唆に富む事例になっているはずです。
例えば、なぜ、当初は考えていなかった地域での中古マンション購入を決断出来たのか?なぜ、当初の要望であった無垢フローリングの床が、安価な下地用の合板でOKということになったのか?
Kさんは、そういったことを全て妥協として決断したのではなく、自分の中で新しい価値に昇華させました。
世間の標準化された価値の尺度や、自分の中にあった思い込みに惑わされないことが、自分らしいライフスタイルを見つめ直すことにつながるし、築40年の中古マンションを資産として考える前向きでクリエイティブな生き方につながると、Kさんは理解したのです。
相談を始めた当初は、世田谷区を中心にしたエリアで広さ50㎡以上の中古マンションを探して、リノベーションして住みたいというのが、 Kさんのご要望でした。
特に、世田谷区の地域性にある独特の「空気感」といいますか、東急世田谷線の雰囲気とか、都心なのになぜかのどかなあの感じに惹かれている…という感じがあったので、世田谷区を中心にリサーチを開始しました。
しかし、世田谷区というのは、ファミリー層に人気のあるエリアです。幹線道路から外れた閑静な住宅地にあるのは、70㎡以上のファミリー向け永住型マンションがほとんどです。
もちろん、予算の条件さえ合えば、どんなに広くてもそれにこしたことはないのですが(笑)・・
管理の良さ(資産価値を決める要素)を踏まえると、購入に値する物件に出会える確率はかなり低い。
そして、やはりといいますか…広さと予算の条件を当てはめると、市場にデータとして出てくる物件は幹線道路沿いばかり(つまり、求めていた「空気感」をはらんでいない気がする…)でした。
環七通り沿い、環八通り沿い、国道246号通り沿い、甲州街道沿い、井の頭通り沿い・・
そういったところに建つマンションは、どうしても、Kさんの住んでいるイメージが出来る感じではなかったのです。
当然、本人もピンとこない。
世田谷区にこだわって探していけばいつか良い物件に出会えると考えていたんだけど・・なかなか、そう単純な話じゃあないんですね。
このままでは要望のエリアでKさんのイメージする住環境の物件はちょっと厳しいかな~
もちろん予算的なことを外すわけにはいかないので、オーソドックスにもう少し都心から離れて探すべきか、正直、迷いました。そこで、Kさんと今までヒアリングを重ねてきた要素を整理して、ライフスタイルや価値観のもっと深いところにあるものを探ってみました。
その要素とは・・
・一生住むわけではない
・将来は自己所有のマンションを運用し、田舎暮らしをしたい
・古くても味わいのあるものが好き
・経年を楽しめる素材が好き(木、石、スチール、など)
・緑が多いところがいい
・のんびりした感じが好き
・利便性は二の次
こういったことを整理していくうちに世田谷区だけにこだわらなくても、案外もっと都心に近づいたほうが合致する物件に出会えそうだ!と、ピンときました。
もしかすると渋谷区と港区にも枠を広げることが出来れば、70㎡以上のファミリータイプだけでなく、50㎡前後の運用しやすいサイズのマンションでも、管理の良い状態で維持されている可能性が高い・・
そこで、今までのリサーチエリアに、渋谷区と港区を加えて見ていくことにしました。
世田谷区よりも、都心から離れなければという考えはもはやありません。なぜなら、将来は田舎に住みたいと考えているKさんにとって、長期での資産性というのが非常に重要と考えたからです。
そうこうしているうちに、渋谷区に面白い物件データを見つけました!
これだ!これはKさんのためのマンションに違いない!
双方が引き合いそうな物件を見つけた時の感覚は、うまく言葉には言い表せないですが、電撃が走るような感覚でかなり興奮します。
興奮冷めやらぬまま、すぐに自転車で現地まで見に行きました(スマサガ不動産の事務所から自転車で行ける距離だったので…笑)。
マンションのエントランスに着いたときも、いい感じにレトロな風合いに、「おおー」「これはKさん好みだ」と、パシャパシャと共用部の写真を撮りまくる興奮度合い。
そのとき、管理人さんに「あなた誰?何してんの?」と、とがめられてしまいましたが(苦笑)・・
それも心の中では、「管理人さん厳しいってことは、管理もちゃんとしてそうだ。いいよ!いいよ~!」とプラス加算。
さっそくKさんにご報告。すぐに現地を見に行く段取りとなりました。
ただ、ひとつだけ懸念していた要素があって、それは、売りに出ていた部屋の広さが40㎡台しかなかったこと・・
しかし、そのネガティブ要素を超えてオススメできるマンションでしたし、専用庭があるので、間取り変更のリノベーションプランによっては開放感のある部屋に再生可能だと考えました。
だから、その場でプランの可能性を検討するためにスマサガの設計スタッフも同行しました。
スマサガの不動産担当が思わず興奮してしまったこのマンションの内見で、設計スタッフも交えてディスカッションするうちに、、、
今まで考えてきた資金計画と実現したいリノベーションのイメージが、Kさんの中でも線としてつながっていったんです。
「・・そうか!部屋が狭いなら外にでかければいいんだ」「周辺環境に、公園も、グラウンドも、緑も、いっぱいある地域なんだから」「もっと、外とつながれば良いじゃない」・・
そう考えることが出来たので、当初の考えよりもコンパクトな40㎡台のマンションですが、リノベーションでデザインはかなり自分好みに出来そうだし・・真剣に検討し、物件の管理状況や資金計画を確認したうえで購入決断するに至りました。
が、しかし・・・
そのまま、申し込み~契約へとステップしようとしたのですが・・・ここで、どんでん返しがあったのです。
実は、Kさんのお父様は一級建築士なのですが、やはり中古マンションは耐震性やメンテナンスの状況等、専門家としても不安な点が多くあるので、手放しで賛同するわけにはいかないという話があったのです。それで、Kさん本人も、家族の賛同が得られないのはあまりいいことではないと・・・
・・・であれば、このマンションに資産性についてスマサガ不動産がどう考えているか、詳しく理解していただくための資料を作成したり、実際に現地を見てもらって、管理や耐震性に問題がないか、ご本人にも確認していただこうと考えました。
そう。家族の賛同が得られるようにじっくり話し合ってから、正式に契約したかったのですね。
しかし、マンションの売り主側の大手不動産仲介の担当者の考えは違いました。
「とにかく、今月中に契約してくれないと困ります」の一点張りで、一日でも早い契約日の設定を急かされながら、物件の調査等への協力は一切してくれません。
結局、「売り主側の業者さんにこういう態度で急かされるなら・・しっかり家族の賛同を得てから行動したいし・・・」ということで、残念ながらこの物件はお流れにする覚悟で保留にしました。
それで、物件探し自体もしばらくストップすることにしたのですが・・Kさんはあきらめずにお父様への説得と説明は続けていました。
最終的には購入する予定だったマンションを、お父様に直接見に来ていただき、「あ〜、これだけしっかり管理されている建物であれば大丈夫だと思うよ」…と、結局は賛同していただけるようになったのです。
さすがに専門家だけあって、実際の物件を目で見れば話が早かったようです・・
ただ、新築と違って、中古マンションは一点ものです。
(時間が経過してしまったのである意味当然ですが・・)その頃には、購入したかったあの物件は、すでに売り止めになっていました。
あきらめて、仕切り直しです・・・
せっかく気に入った物件の購入を、泣く泣くあきらめたその1ヵ月後・・
同じマンションの別の部屋で新しい売り情報が出てきたんですが・・その物件は、1ヵ月前にあきらめた物件よりも高額ではあったのですが、さらに魅力にあふれた条件のものでした。
始めに出会った物件は1Fで専用庭付きだけど部屋の中は45㎡程度で、広さを求めないことで立地の良さの割には物件価格をおさえることが出来るというのが戦略を考えていた。
だけど、今度の物件は角部屋の5Fで眺望も良く57㎡というまずまずの広さを持った物件。
そのままの内装では、窓の開口を分断する間仕切りが邪魔でそれほど広さを感じないが、リノベーションすれば必ず豊かな空間にグレードアップ出来る物件だと確信できたんですね(どうやら売り主さんはその隠れたポテンシャルに気付いていないようだったけど…)。
ただ、当初の資金計画のシミュレーションでは、広さを求めない代わりに物件価格をおさえるというコンセプトで、リノベーション費用を1000万円以上かけてもエリアの資産価値に見合った投資になると考えていた・・
しかし、今度の物件は、始めに出会った物件よりも若干広めで、素晴らしい眺望を持つ代わりに、コンセプトにピッタリはまる物件価格を500万円ほど上回ってしまう・・
リノベーション費用をかなりおさえることを考えないと、簡単に予算オーバーしてしまい、目標だった住まいを資産として考えたいというコンセプトが実現出来ない。
つまり、自分のやりたかった内装のイメージを全て実現してしまうと投資過剰になるということ・・
それは悩ましい。
なぜなら、Kさんにはなんとなくではあるが、こういう空間に住みたい・・というイメージがずっとありました。それが、ひとつの住まい探しの動機でもあったわけです。
それは、無垢フローリングとか古材とか、タイルとか、漆喰とか、ホンモノの素材にこだわりたいというもの・・つまり、どうしても内装に費用がかかりがちなパターンです(苦笑)。
ただ、長い目で見てしっかり愛せる住まいにしていきたいからこそ、素材にはこだわりたかった・・・
そういうこともあって、物件価格をおさえめにしリノベーション費用を若干多めに確保するコンセプトを考えていたんですが・・
しかし、そのコンセプトを守ること以上に、2度目の正直であるこの物件との出会いは本当に魅力的だった。
でも、コンセプトはともかく、絶対に予算オーバーするわけにはいかない・・・
長い目で見てしっかり愛せる住まいにするには、素材のこだわりももちろん大事だけど、実は、資金計画のほうがもっと肝心なんじゃないかということがKさんには理解できていた・・・
自分らしい住まい探しに取り組む流れの中で、資金計画のシミュレーションをしながらしっかりコンセプトを決めておくことは非常に大事です。しっかり練り込まれたコンセプトをもって、実際の物件を内見しないと、絶対に良い結論にたどり着くことは出来ません。
しっかりした住まい探しのコンセプトを持っている人が、「リノベーションでこの間仕切りが取れるんだ〜」といったアドバイスを受けながら内見するという、ある種の訓練(笑)を繰り返しているうちに・・だれでも、だんだんと目が肥えてくるんです。
そして必ず、「一目惚れ」の瞬間が訪れる。
「あ。ここに住みたい!」というインスピレーションみたいなものが・・今まで、どの物件を見に行ってもピンとこなかったのが、他の物件とそんなに変わらないのに、なぜか、自分にはここしかないと「直観」でわかる・・そういう感じ。
それが、何度も内見を繰り返して1年以上かかる人もいれば、初回数件の内見で「一目惚れ」に出会ってしまう人もいる。平均的には1〜3ヵ月くらいですが・・住まい探しを能動的に考えている人なら必ず、「あ。ここに住みたい!」という「直観」を、いつか体験出来るときがくるんです!
ちなみに、コンセプトを持たないで内見して、ただ「どの物件がオトクなの?」っていうレベルの思考で感じる「直感」は、ただ世間の標準的価値観に踊らされている可能性が高いので注意してくださいね(苦笑)。
「直観」と「直感」・・・
漢字が違うだけで発音は同じですが、意味は大きく違います。
本質的な価値を見抜く「直感」という境地には、ちゃんと自分のアタマで深く考えた結果でしか到達出来ないものなんで・・
つまり、どんなに最後は「直観」という「一目惚れ」で、コンセプトを変える可能性があるとしても、最初の段階で住まい探しのコンセプトを持つか持たないかは、結果に雲泥の差をもたらすということです。
で。この物件は、Kさんがもともと購入の決断をしかけていた中古マンションの別の部屋です。
管理状況なども調査済みでわかっているし、「あ。ここに住みたい!」という心の叫びに気が付いたら、あとは早かった・・
「リノベーション費用を700万円におさえる努力を乗り越えて、この物件を購入しよう!」
スマサガ不動産では、物件価格とリノベーション費用を合算して、購入リスクは高すぎないか・・そして、リスク以上の投資価値があるかということを、クライアントといっしょに考えます。
クライアントにとって良い資産をプロデュースするためには、物件が立地する場所に対して物件価格が高すぎるのはダメ、リノベーション費用をかけすぎるのもダメ。中古マンションの物件価格とリノベーション費用の総額(購入資金にローンの割合が多い場合は特に…)が、5年後、10年後の価値推移に対して、適切な投資になっているか?・・ここにはめちゃくちゃこだわるべきです!
投資バランスが最適になるように、物件探しの段階から、不動産の専門家と建築設計の専門家がいっしょに知恵を絞って、どのような予算組みをするのかを考えて、クライアントとも共有します。
で。Kさんの場合は、物件があまりに素晴らしい素性のものが見つかって、当初のシミュレーション通りにはいかなくなりましたが、当初の予算計画を大きく外すわけにはいきません。
なぜなら、あれだけシミュレーションして、Kさんの現状ではこの立地でこの金額を投資して住まいを探すのが適切です・・というふうに考えたコンセプトです。物件価格が増額になった分は、リノベーション費用をおさえながらも、費用対効果の高いプランを考えていくしかありません!
この場面で、みんな、不動産業者さんやリフォーム屋さんなどに煽られて、「一生に一度だから、念のために後悔のないようにしておきましょう!」とかいうことで、不要に高額な消費に走ってしまいます・・でも、考えてみて下さい。
リノベーションで資産価値をコントロールする手段を知ったとしたら、住まい探しは一生に一度のことではありませんよね?
資産はたくさん持っても資産なので・・困ることはありません。むしろ、自分の人生を助けてくれるものにも出来るので・・だから、スマサガでは、一生に何度でも住まいの購入が出来るように、資金計画の余力を持って、最初の投資をするようにおすすめしています!
だって、結局、「念のために」で初めての住まいに贅沢して、無理なローンを選択してしまった人の90%以上が、「あー、あのときあーすれば良かった、こーすれば良かった・・」って後悔してるじゃないですか?
「家は3回建てないと満足出来ない」って、よく言いますよね?
そして、3回建てる力を持つためには、最初に購入する住まい購入で中古マンションのリノベーションを選択して、資産価値のコントロールを体感しておくことがめちゃくちゃ重要なんです!
なので、間取りも、使う素材も、出来るだけシンプルに、ただし、配管など交換できるものは全て交換する。そういった内容で、予算内に収めることを優先的に考えながら、リノベーションのプランを練っていこうということになりました。
ただ、シンプルにするっていうと簡単そうですが・・
設計が始まってみると、実際はそれほど簡単なことじゃないな〜と、みんな気付くんですね(笑)。
人はそれぞれ今まで生きてきたストーリーの中でしか生活のイメージが出来ませんから、Kさんと設計者の息を合わせるのも大変です。
設計側で何度も何度もプランを描き直すのですが、その度に、「あー、ここはやっぱりこうなっていたほうがよかったですね」という感じで、なかなか先に進めないのです。いつも思うのですが(苦笑)・・シンプルっていう言葉こそが、もっとも摺り合わせるのが難しく、人によってシンプルの定義があまりに違いすぎて・・
まあ、なんというか、それが楽しいのですけれど(笑)。
でも、Kさんは設計の途中でも何かを開眼したようで・・・
ある時点から、
「正直、お風呂をガラスで仕切るというのも圧迫感がありますよね」
「シンプルというなら収納もなにもつくる必要はなくて、自分の好きなものに囲まれて暮らせるのがいいんじゃないか」
と、自分の中にあった「自分らしさ」の定義を自分自身で書き換え始めたのです。
おそらく、もともと自分の中にあった「こだわり」の感性があふれてきたのだと思うのですが・・
自分自身が主体的にイメージしていかないと、本当に「自分らしく」かつ、資産価値も高い住まいっていうのは実現しない!・・ということを、理解してもらえたんだと思います。
そこから先はスムーズでした。
空間はとにかく開放させて、素材も、当初のこだわりだった床の無垢フローリングはやめて、ラーチ合板という通常は下地に使うためのラフなもので済ませたし、そういうのがどんどん部屋の味として結実していきました。
そして、Kさんは、住みながら自分とともに成長してくれる、理想の「ゼロ地点」の家を手に入れたのです。つまり、未完成であることが自分らしいという、今時点でのゴールです。